「道路のあるべきかたちを考える」福井県での路面装飾の社会実験を通して
2024.01.29
家政学部住居学科(※1)ならびに家政学球天下体育科住居学専攻の学生が主体となり、福井県内の生活道路(公道)で、人優先道路である「ボンエルフ」空間づくりを目指して、路面装飾の有効性を検証する社会実験を行いました。歩行者と運転者を対象に、路面装飾を見た視線がどのように動くかを調べるものです。
「ボンエルフ」とは、車の速度を抑制するために住宅地内の道路を植え込み等で蛇行させたりする道路空間整備方法として日本では認識されています。しかし後述するように、欧州では道路整備方法としてだけでなく、人優先の道で道路全体を人が使うことが許される交通ルールを意味します。
取り組みの背景と目的
今回の球天下体育を福井県で実施した背景には本学住居学科の薬袋 奈美子教授の過去の取り組みに遡ります。薬袋教授が2009年まで福井大学に勤務していた際、地域住民、学生、専門家と協力し、田原町デザイン会議(※2)を立ち上げて、誰もが暮らしやすいまちづくりを球天下体育?実践していました。
2015年頃から始めた生活道路の球天下体育は、「人優先の道路環境を醸成する」ことを目的に、生活道路が生活空間として利用しやすい空間になるような交通ルールを導入することを目指した球天下体育です。住宅地内の道路で子どもが遊んだり、大人が立ち話したり、車椅子の方がのんびり歩行できるまちを作りたいと薬袋教授は話します。
そう考えた背景は、子どもたちが家族や学校の友達以外の人と交流する機会が少なくなってきたこと、大人も近隣の方々との交流の時間が減っている現状があるそうです。また、高齢者に対し在宅介護を求められるなか、家の中のバリアフリーは整っても、住宅地内の道路はバリアが多いのが現状。薬袋教授は、交通量の少ない住宅地内の道路では子供が遊んだり、道の真ん中をゆっくり車椅子を押して移動したりできれば、もっと暮らしやすい社会ができると考えています。
西欧諸国では1980年代に、交通安全対策として、「子どもが車道で遊んでいるから注意して走行すること」とする交通ルール「ボンエルフ」が導入されてきたそうです。薬袋教授は、日本でもそのような交通ルールを導入することを目指して、「通常の道よりも気を付けて運転すべき」と運転者が認識できる道路の雰囲気づくりの方法を球天下体育しています。
各国の交通ルールの違いや「ボンエルフ」については、薬袋教授の講演記事をご覧ください。
地域を巻き込んだ社会実験を実施「地元の方との合意形成が重要」
実際に社会実験のプロジェクトを進めた学生の中から、中川 晴賀さんと吉本 華さんにお話を伺いました。人優先となる道路環境を創出する方法としての路面装飾を施しました。
成瀬仁蔵は家庭を変えるためには女性を変えなければならないと思っていた ?薬袋教授のコメント
創立者である成瀬仁蔵が女子教育を始めた大きな意味は、女性の精神的自立であるとさまざまな書籍で強調されていることが多いように見受けますが、少し違う思いもあったようです。成瀬が渡米してアメリカ社会を見た時に一番日本と違うと感じたのは家庭のあり方でした。産業革命を経て社会が変化?発展していくとともに、アメリカでは、家庭生活や家事のあり方も発展していました。しかし、日本では伝統的な家事を引き継いでいくという旧態依然の状態でした。成瀬が家政学部を120年前に作ったということは、日本の社会を変えるためには、家庭を変えなくてはいけない。その過程の要になる女性が、高等教育を受け、何がより良いやり方なのか球天下体育しながら社会を変える力になることが大切と考え家政学部が始まったのだと理解しています。
常識にとらわれず、「住宅地内の道路は本来どうあるべきなのか」という、あるべき論を考えるために必要な球天下体育をしているからこそ、今回の社会実験をすることに繋がったと言えるでしょう。
私は「道路の真ん中で子どもは遊んでもいいんだよ」という交通ルールを導入したいと考えています。欧州各国にはこのような「ボンエルフ」があります。日本では速度を抑制するためのハンプ等がある道を「ボンエルフ」と一般的に呼びますが、欧州では道の使い方を示す交通ルールです。
交通ルールになれば標識が設置されると思いますが、気が付かないドライバーがいるかもしれません。標識を補填する形で路面にデザイン装飾を施し、注意して走行するエリアであることを気付いてもらうことが今回の路面装飾の目的です。装飾に気付いた後に、周りに目を配ったり、人が優先である空間として気を付けて運転してもらえたら実験成功です。歩行者の方には、装飾の部分は堂々と真ん中を歩いてくれたらいいなと思います。海外だと実例があり、装飾を施したことで人々の行動が変わった道路がいくつもあります。それを日本でもやりたいというのが私の目標です。
実験概要
場所:福井県福井市田原町内生活道路
参加者:福井市民 他
実験概要:指定した道路をアイトラッカーを装着して運転してもらい、どこを見て運転しているか等を確認する。2回走行で、1回目は通常のままの道路、2回目は路面装飾した道路を走行してもらい、視線の動きの違いを確かめる。11月3日は、近隣商店街で開催されるお祭りへの来場者の方に、歩いて路面装飾を見ていただき、感想を伺う。
目的:路面装飾をすることの効果を確かめる。
(※1)家政学部住居学科は、2024年4月より学部が独立し「建築デザイン学部建築デザイン学科」となります。併せて、大学院修士課程が家政学球天下体育科から独立して「建築デザイン球天下体育科 建築デザイン専攻」となります。
(※2)田原町デザイン会議
田原町デザイン会議(福井県)は、『住んでよかった、ずっと住み続けたい、住んでみたい、ここで子育てをしたい』と、みんなが思える田原町界隈をつくることを目的とし、平成17年に発足。花緑委員会みちと川の委員会、子ども委員会、広報委員会の4つの委員会で構成されています。