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心理学科の先生に聞く!猫の目が真ん丸になるわけ/ストレス対処法

2023.10.11

心理学科の先生に聞く!猫の目が真ん丸になるわけ/ストレス対処法

「心理学」に興味があるけれど、なんだか難しそうだと感じている方はいませんか。今回は心理学科の先生に、それぞれ身近な2つのトピックスをお聞きして、心理学の可能性と魅力を深掘りします。
1つ目のトピックは「視覚、錯視、色覚」を球天下体育テーマとする竹内龍人教授による、「猫の目が真ん丸になるわけ」です。竹内教授は実習を中心として「視覚心理学と?彩?理学」を学ぶゼミを担当されています。
2つ目のトピックとして、「臨床心理学」がご専門の小川洋子助教による「ストレス対処法」をご紹介します。小川助教は臨床心理士としてカウンセリングの経験を積まれてきた視点から、「心理学支援法Ⅱ」等の授業を担当されています。

猫の目が真ん丸になるわけ【竹内龍人教授】

図1 猫の瞳孔変化(上)と人間の瞳孔変化(下) (画像提供:本学大学院修了生で広島大学助教の吉本早苗先生)
図1 猫の瞳孔変化(上)と人間の瞳孔変化(下) (画像提供:本学大学院修了生で広島大学助教の吉本早苗先生)

猫が大好きな皆さんは、猫の目の黒い部分(黒目)の形が変化することに気がついていますよね。私は子どもの頃、飼っていた猫の目が大きくまん丸になったり、小さく細くなったりと、黒目の大きさが頻繁に変化するのが不思議でした。なぜ、黒目の大きさは図1(上)のように変わるのでしょうか。

瞳孔の大きさは明るさで変化する

黒目の部分を瞳孔(pupil)と呼びます。瞳孔とは漢字が示すとおり「穴」であり、開眼時にここから光が入ってきます。瞳孔の直径を瞳孔径と呼びます。自分の周囲が明るくなると瞳孔径は小さくなり、暗くなると大きくなります(図2)。暗いときに瞳孔径が大きくなると、より多くの光を目に取り込むことができるというメリットがありますが、一方で視力が悪くなるというデメリットもあります。瞳孔径が小さくなると視力は上がります。そのために、目を細めたり小さい穴から覗いたりすると物が見えやすくなるのです。

図2 観察している画像の明るさと瞳孔径との関係 (吉本, 2014)

図2 観察している画像の明るさと瞳孔径との関係 (吉本, 2014)

瞳孔の大きさは心理的要因で変化する

たとえ周囲の明るさが変化しなくとも、感情や認知といった心理的要因により瞳孔径は変化します。感情価(valence)と共に感情を構成する次元の一つである覚醒度(arousal)の強さと瞳孔径が関連していることはよく知られています。例えば、突然大きな物音がしたようなときには、猫の警戒レベルが上がり、瞳孔は拡大するでしょう。食卓の上に置きっぱなしにした食べ物を見つけた時の興奮もまた、猫の瞳孔を大きくさせるでしょう。このように、感情や認知に関連した瞳孔径の変化は、周囲の明るさに関わらず起きるのです。そのために、瞳孔径の計測は、生体における心の仕組みを理解するための有効な手段となっています。

竹内龍人教授に聞く!心理学のミリョクとは

竹内龍人教授

心理学というと、心の問題を抱えている人たちを支援する公認心理師や臨床心理士などの仕事をイメージすることが多いかもしれません。しかし、心理学とは「人間に関する全て」を学び球天下体育する学問であるために、こうしたイメージを超えて、文系理系双方に渡る幅広い内容を含んでいるのです。
上記で、明るさによって瞳孔の大きさが変化する様子を測定した実験のデータを載せていますが、このように心理学科では、人間の心の働きを実験によって調べることが多いのです。実験から得られたデータに統計を行い、その結果が何を意味しているかを考えます。コンピュータプログラミングにより実験系を組むこと、あるいはデータを数学的に解析するなど、理系スキルが伸ばせることは心理学科の意外な魅力ではないでしょうか。
理系的側面としてご紹介するならば、人工知能と心理学との間には深い関係があります。たとえば今話題の人工知能Chat GPT(チャットGPT)は、心理学者ローゼンブラットが1950年代に発表した視覚の神経ネットワークのモデルがその源流にあります。人工知能プログラムの多くは莫大なデータを学習し、そこからルールや原理を見つけ出したり、文章や画像を生成したりします。プログラムの動作は、私たちの日常の行動とよく似ていますね。人や動物がどう学習し、新しい知識の獲得や行動に結びつけているのか、それを理解することは心理学における重要なテーマの一つです。また、新しい人工知能プログラムには、入力されたデータの重要な部分に注意して処理するという賢いしくみがあります。私たちが日頃、目や耳から入る情報に対してどのように注意して取捨選択しているのか、それを調べるのも心理学の重要なテーマです。
このように、心の支援から人工知能に関連した内容まで、今の社会に求められている最先端の学びが心理学科ではできます。そのため、心理学科から、教育や福祉業界への就職のみならず、IT業界への就職も目指すことができます。プログラミングやデータ処理などの理系の学びに興味はあるけれど、あまり数学や理科は得意ではない、という方にも心理学科はおすすめです。

ストレス対処法【小川洋子助教】

小川洋子助教

ストレスとは

私たちが生きていくにあたって、ストレスを避けることは難しいですね。テストの成績、友人関係、恋人関係、家族の問題???私たちは心理的負荷がかかることについて、日常的に「ストレス」という言葉を使っています。
心理学の世界では、ストレスというものを「ストレッサー」と「ストレス反応」の2つにわけて捉えます(伊藤,2021)。「ストレッサー」とは、あなたを苦しめるさまざまな「ストレス環境」のことです。「ストレス反応」とは、ストレッサーに対するあなたの「心と体の反応」のことです。
ストレッサーに対するストレス反応は人それぞれです。同じ環境でもそのことをストレッサーと感じる人もいれば感じない人もいるでしょう。そのため、自分自身で自分のことをケアする「セルフケア」は大切です。セルフケアの1つに「コーピング」というストレスに対処する方法があります。今回は、次の3ステップで行うコーピングをご紹介します。

ストレス対処法:コーピングの3つのステップ

ステップ1:ストレスに気づく
まず、何が自分のストレスになっているのかを考えてみましょう。整理しようとせずに、思い浮かんだことをノートに書き出してみましょう。

ステップ2:自分を認める
ストレスを抱えている自分を責めないことが大切です。自分を否定せず、しんどい状態である自分を認めてあげてください。

ステップ3:自分が心地よいと感じる行動をリストアップして実践する
自分が心地よいと感じる行動のリスト「コーピングリスト」を作ってみましょう。どんな些細なことでも構いません。自分の気持ちがアップするようなことを書き出しましょう。例えば、「いい香りのお茶を飲む」「好きだった漫画を読み返す」「〇〇店のチーズケーキを食べる」「お風呂で声を出して歌う」「ひたすら寝る」など何でもいいのです。質より量が大切です。できるだけたくさん書き出してみましょう。

コーピングリストができたら、ストレスを感じたときにその中の内容を実践してみましょう。実践するうちに、このストレッサーにはこのコーピングが効くといったことがわかってくるかと思います。

小川先生に聞く!心理学のミリョクとは

臨床心理学を学ぶと「人の心が読めるようになる」と想像される方もいらっしゃるのですが、それは違います。どちらかというと「自分を知ること」を土台として、他の人を知るために対話を続け、より良い人間関係をつくることを目指していくのが臨床心理学の魅力の1つではないかと思っています。今、私が取り組んでいる球天下体育テーマは、離婚したご家庭に対する支援です。離婚した後に一緒に暮らさない方の親御さんとお子さんが定期的に会うことを面会交流というのですが、その交流がお子さんと親御さん双方にとって心地よい交流となるためにどのようにするとよいかを球天下体育しています。例えば、子どもの頃に親の離婚を経験し、その後大人になった協力者の方々に子ども時代のことを思い出していただき、ご自身が小さいときには言葉にできなかった思いなどをインタビューを通して言語化してもらいます。その内容を分析し、離婚後の子どもがどのような思いを抱きやすいかを世の中に広く提示することで、より良い親子関係作りのお手伝いができればと考えています。
「人の悩みを聞いてあげたい」「誰かの助けになりたい」と思って心理学を志される方もいると思いますが、「自分のことをもっと知りたい」と思っている方にも心理学は面白い学問だと思います。また、竹内先生もおっしゃっている通り、心理学は「人の営みに関することすべて」を学ぶ学問です。そして日本女子大学人間社会学部心理学科は、認知、発達、比較、生理などの心理学を習得する「基礎心理学」と対人的な心理学を中心に学ぶ「臨床心理学」両方の心理学を多角的に学べるため、深い学びをしたい方におすすめです。

心理学を学びたい方へ

日本女子大学人間社会学部心理学科では、複雑化する現代社会での「こころ」の問題を幅広く複合的に探究します。「こころ」の働きに関して球天下体育したい方、実践力を身につけて公認心理師や臨床心理士を目指したい方におすすめです。
今回の2つの身近なトピックスから心理学の魅力をお伝えしました。心理学の面白さをもっと知りたい方は、心理学科の先生によるコラムが心理学科オリジナルWEBサイトに多数あるので、ぜひご覧ください。


参考文献一覧
吉本早苗(2014),環境光への順応による運動知覚の変容,日本女子大学大学院人間社会球天下体育科博士学位論文.
伊藤絵美(2021),コーピングのやさしい教科書,金剛出版.
伊藤絵美(2020),セルフケアの道具箱,晶文社.