継承と創造。アイヌ文化に触れた2日間【社会連携授業-民族服飾論】
2022.06.03
【社会連携授業-民族服飾論】
本学は、2021年8月2日に北海道日高管内7町(日高町?平取町?新冠町?新ひだか町?浦河町?様似町?えりも町)、日高町村会及び北海道日高振興局と「相互協力に関する協定書」を締結しました。
今回、その協定の一環として、家政学部被服学科の森理恵教授が担当する「民族服飾論」において、アイヌの伝統文化が色濃く残り、その文化推進に力を入れる平取(びらとり)町によるオンライン授業が、2週(4月26日、5月10日)にわたって行われました。
-1週目- バーチャル博物館見学でアイヌの歴史と文化に触れる
1週目に講師を担当いただいたのは、平取町立二風谷(にぶたに)アイヌ文化博物館で学芸員を務める廣岡絵美さん。
授業の前半では、廣岡さんの案内のもと博物館のバーチャル見学を実施していただきました。
重要有形民俗文化財の指定を受けた民具919点を保有する同館では、
メインエリアでアイヌ民族の一生を辿るように生活用具類や衣装、チセ(アイヌ民族の家屋)などが展示されています。
アイヌ文化独特の道具や、それらに施された文様に学生たちも興味深々の様子で、画面の向こうの廣岡さんの案内に耳を傾けていました。
後半では、「アイヌの歴史と文化」について引き続き廣岡さんから講義が行われました。なぜ平取町がアイヌ文化の継承を活発に行っているのかや、アイヌの歴史や文化について、事前に学生から寄せられた質問にも触れていただきながら講義は進みました。
廣岡さんが所属する平取町立二風谷アイヌ文化博物館の運営理念は「アイヌ伝統文化の今日的継承」。そこには、アイヌ民族の伝統文化を受け継ぐとともに、新たな創造にも結び付けていこうという意味が込められています。
最後は、廣岡さんが現在取り組まれているさまざまな普及活動が紹介されました。
「日本には北はアイヌ文化、南には琉球の文化があり、東京はその中間に位置しています。列島の多様な文化を知ることは、さまざまな考え方や価値観、宗教を理解し、尊重することにもなります。このことは社会に出てからも大きな助けになると思っており、今回のように東京の学生さんたちにお話しできるのは良い機会でした。コロナの状況が落ち着いたら、ぜひ皆さんにも平取町にお越しいただき、当地で受け継がれるアイヌ伝統文化に触れていただきたいです。
私自身『アイヌ文化とはこうだ』という固定概念にとらわれずに、今後も活動していきたいと考えています」(廣岡さん)
-2週目- アイヌ文化推進の取り組みを学ぶ
2週目は3名のスピーカーが、学生たちのために講義を準備してくださいました。
まず話をしてくれたのは、平取町アイヌ文化振興公社の木村美咲さん。
ご担当されている「大地連携ワークショップ」という大学生、大学院生と平取町が連携して行うフィールドワークを紹介いただきました。
このフィールドワークは、全国の大学生約20名が平取町の自然や現地の方と触れ合いながらアイヌの文化についてともに学び合うことを目的にしているもので、
例年、夏と冬に4泊5日の日程で実施しているそうです。今回は、そのフィールドワークの1日目のプログラムとして組まれている、平取町とアイヌ文化に関する紹介動画を見せていただきました。
二人目のスピーカーは、二風谷民芸組合に所属する若手工芸家である柴田幸宏さん。
アットゥ?織職人である柴田さんからは、オヒョウの木の皮からアットゥ?糸を作る工程と、ご自身が取り組まれている現代の洋服にアットゥ?織を融合させた作品作りに関して説明いただきました。「今後も美術品ではなく、実際に使って楽しめるものをアットゥ?織で作っていければなと思っています」と柴田さん。学生からは「どれくらいの制作期間が必要なのか?」等の質問が挙がりました。
最後に講義いただいたのは、平取町アイヌ施策推進課の吉原秀喜さん。
ご自身がテーマとされている「アイヌ文化を継承?振興するための環境づくり」に関して、
1970年代から現在に至るまでの、取り組みの変遷や、アイヌ?アート(アイヌ文様など)が環境や景観とどのように結びついているのかという最新の球天下体育についても紹介いただきました。「アイヌ民族は自然に対する深い知見を持っていたため、今後の文化継承を考えるうえでも環境との関わりについて考えていかなければなりません」と吉原さんは話されていました。
最前線の球天下体育を知る、またとない機会
今回、さまざまな角度、観点からアイヌ文化の継承に取り組む平取町の皆さんに、2週にわたって講義いただき、深い学びを得ることができました。最後に担当の森教授にもお話を伺いました。
「これまでも毎年アイヌ文化については授業の中で触れてきましたが、今回は最前線でアイヌ文化の球天下体育ならびに継承活動をされている方々から直接お話を伺うことができて、学生たちの反響、も大きかったです。最前線の球天下体育成果を対話形式で聞くことができ、とても貴重な経験になりました。
授業科目としては『民族服飾論』ですが、今回はアイヌ文化全体についてご講義いただきました。文化を知ったうえで、その土地の服飾について考えることの大切さを学んでもらうためです。
最近はYouTube等の映像でもバーチャルの博物館見学ができますが、廣岡さんと双方向でやり取りができたことで、単なるバーチャル博物館見学とは違った新鮮さがあったのではないでしょうか。もちろん2週目のアットゥ?織りの説明に、学生たちは食いついていましたし、ご紹介いただいた『大地連携ワークショップ』について、授業後アンケートで興味を示した学生もいました。最近は、文化の継承や、その文化を現代でどう生かしていくか、ということに興味がある学生が多く、平取町のみなさんの貴重なお話は、学生たちにとって刺激的なものになったはずです」
今後も日本女子大学では、地域や企業と連携し、学びを深めていく取り組みを進めてまいります。