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文京区の防災士を地域の避難所運営リーダーに育成する「文京避難所大学」を開催

2023.12.21

学生も複数参画する自治体と大学の連携型防災プロジェクト

2019年度から始まった文京区と日本女子大学社会連携教育センターとが地域の社会課題を解くために連携する試みのひとつとして、文京区全域の防災士?防災リーダーの全体会が、毎年2回実施されています。この市民教育プログラムは、地域の避難所運営を支援する防災人材を育てることを目的とすることから、「文京避難所大学」と名づけ、今年で5年目になりました。2023年度は、通算5回目を11月7日(火)、6回目を12月12日(火)に文京区民センターで開催しました。

災害後の避難所は、家を失った人々が身を寄せる大切な生活の場であり、首都直下地震発生時には200万人を超える人々が暮らすことが想定されます。その避難者数の多さもあり、生命と生活を守る上で災害発生後の早急な対応が求められています。とくに仮設住宅に移るまでの長い期間、安心できる住民の共助の場所をつくるのが地域の避難所の役割です。ですが、避難所は1,000人を超えるような多数の住民が暮らす大きな家ため、住民主体とは言っても運営スキルは高度です。避難者支援のノウハウや避難所運営に習熟するため、日常から準備や訓練が欠かせません。

そこで、避難所を支援、運営するためのスキルを備えた区民リーダーを育成するための「避難所大学」では、家政学部住居学科の平田京子教授と石川孝重名誉教授が開発した教育プログラムに基づき、文京区および本学社会連携教育センターとともに教育方法や目標?内容を検討しています。この教育プログラムは市民による主体的?協働型避難所運営を可能にするもので、本学のオリジナルです。

講師(平田京子教授と石川孝重名誉教授)の講義が始まりました
講師(平田京子教授と石川孝重名誉教授)の講義が始まりました

「文京避難所大学」は、参加者の要望を受けて毎回教育内容を見直し、プログラムをアップデートしていますが、今年は要望の多かった「避難所での情報収集?情報周知」と、文京区が配備している「避難所開設キット※」の実践と課題検討を中心に行いました。文京区には33の避難所がありますが、各避難所地域で育った防災士?防災リーダーがグループワークを行いながら、実際の避難所運営に活かす施策を検討しました。

防災士の方々の志気は高く、毎回、グループワークは活発です。何よりも地域をよく知っている方々なので、実際の避難所運営の課題が次々と議論されていきます。参加された防災士?防災リーダーは、アマチュア無線などの特技を持っていたり、自分たちで避難所開設キットをまとめたり、訓練を主導したり、お住まいの地域での支援活動を積極的に行ってきたような実践派の方々です。防災士?防災リーダー同士でつながることにも価値を見いだしておられ、避難所大学は出会いとつながりの場ともなっています。

最近は平日の夜に開催しているため2時間という短い時間ですが、グループ討議では色々な意見が出され、あっという間に時間が過ぎていきます
最近は平日の夜に開催しているため2時間という短い時間ですが、グループ討議では色々な意見が出され、あっという間に時間が過ぎていきます

避難所大学のプログラムの中では、意見を出し合い、それをまとめていくワークショップのスキルを重視しており、支援者となるためのさまざまな経験をしていきます。今年はグループごとに避難所開設キットを実演しつつ、課題や気づきを共有し、改善を検討していきました。そして、それらをグループリーダーが発表し、講師が講評してまとめていくスタイルをとりました。防災士?防災リーダー同士が議論し、参加者が得た学びを、お一人おひとりが地域の避難所運営協議会に伝え、協議会とともに文京区の避難所開設キットをアップデートして実践力を高めていくのが目標です。このプログラムを行う中で、防災士の活動を地域住民の方々に伝える情報誌のアイデアも生まれてきました。文京区の全域で、こうした支援者とその絆が生まれつつあります。

※避難所開設キット:発災後3時間程度の行動を想定して、避難所開設の前段階から開設後の初期段階までの行動手順書及び各種掲示物等

前回参加者の意見のまとめを解説。ほかの方の意見はいつも新鮮で興味深いため、参加者も真剣に耳を傾けています
前回参加者の意見のまとめを解説。ほかの方の意見はいつも新鮮で興味深いため、参加者も真剣に耳を傾けています