「国際バレエコンクールジャパングランプリ」3位入賞!家政経済学科4年荻原千聡さん
2023.10.05
2023年8月1日(火)~5日(土)に、新宿文化センターで国際バレエコンクールジャパングランプリ(以下ジャパングランプリ)が開催され、家政学部家政経済学科4年生の荻原千聡(おぎわらちさと)さんがクラシック シニア部門に出場しました。
ジャパングランプリは国際審査員を招いて行われる国内トップレベルのコンクールであり、その中でもシニア部門にはプロダンサーも参加しています。予選1曲、決勝1曲の異なる2曲において技術?音楽性?将来性が審査され、荻原さんは見事3位入賞されました。今回はその活躍に際して荻原さんにお話を伺いました。
挫折を乗り越え
大舞台への挑戦を決意
私がジャパングランプリに出場するまで、2つの大きな挫折がありました。1つ目は中学生のときに、バレエのプロになることを諦めたことです。私は3歳からバレエをはじめ、気づいたときにはバレエが私の日常に溶け込んでいました。そのためプロを目指すことは自然な流れだったように思います。しかしプロになるためには高校進学せずに海外のバレエ学校へ長期留学する必要がありました。私は両親から高校進学を勧められ、プロを断念する決断をしました。
同じスタジオで練習した同期が次々と海外留学をしていく中で、「プロにならない」という選択は悔しく、言葉にできないほど辛かったです。その後日本に残って1人バレエを続ける中で、努力すればするほど苦しくなってしまい、昨年1年間バレエを休む決断をしました。これが2つ目の大きな挫折です。ですがバレエでの悔しさや挫折は、バレエに正面から全力で向き合うことでしか解決しないと思い今年2月に復帰しました。復帰したその当日に、「これまでのバレエ人生に決着をつけたい」という思いから、ジャパングランプリへの出場を決めました。
「幸せでしかたなかった」
ジャパングランプリまでの日々
バレエに復帰した大学3年生の2月は、バレエだけでなく就職活動や卒業論文執筆も同時に進める必要がありました。復帰からジャパングランプリまではわずか半年。全てに妥協しないと決めていたので、朝起きた直後から寝る直前までわずかの時間でも活用することで、毎日バレエの練習時間を捻出しました。
練習の日々は睡眠時間を削ったり友人と遊ぶ時間がなかったりと多忙を極め、自分を限界まで追い込んでいる状況でしたが、同時に大好きなバレエの世界に戻ってこられたことが幸せでしかたなかったです。バレエが踊れることが最高に嬉しくて、無我夢中で踊っていました。
練習を支えてくれたのは、3歳から変わらず通い続けているバレエスタジオの恩師です。1年間休んでいたにも関わらず復帰日から受け入れてくれて、ジャパングランプリ出場まで厳しく指導してくださったことに感謝しています。
舞台は1回勝負
バレエ音楽に思いを乗せて
ジャパングランプリは1つのミスが命取りになるレベルの高い大会です。そのため頭の天辺から足の爪先まで0.1mmにこだわって、バレエ音楽の世界観を表現できるよう踊りました。今大会で踊った曲は、予選が『ジゼル』で決勝は『オーロラ』(眠れる森の美女)です。これまでに踊ったことがない曲でしたが、あえて自分の限界に挑戦するために選びました。
『ジゼル』は三大バレエ?ブラン(女性ダンサーが白いコスチュームを着用して踊る作品)のひとつに数えられるロマンティック?バレエの代表作です。今回踊ったのは少女ジゼルが大好きな踊りを楽しく踊る場面。「踊りが大好きでしかたがない」という私の思いと重ねて踊りました。『オーロラ』は私がバレエの世界を志すきっかけになった曲です。自分の初心に向き合うことでバレエ人生に決着をつけようと選択をしました。
予選、決勝では、どちらも自分の気持ちを乗せて踊れたという手応えがありました。バレエにかける思いを全てこめて踊ったので、決勝の直後は身体の力が入らなくなり倒れこみました。そして一気に緊張が解け、涙が溢れました。
私はこれまでも多くの大会に出場してきましたが、今回これほど大きな大会で3位入賞できたことで自己ベストが更新できました。長い間葛藤していたものが突破できて安堵しています。また大会後にバレエの恩師、高校や大学の友人をはじめ多くの方が喜んでくれたことが何より嬉しかったです。本大会をもって、私のバレエ人生に決着をつけることができたと感じています。
バレエの魅力は
踊りで観客と心が繋がること
私は暇があればバレエのことを考えているくらい、バレエという芸術が大好きです。バレエの魅力は語りつくせないですが、国境や時代を越えて踊り手と観客が心で繋がれることが最大の魅力でしょうか。
バレエは歴史がとても長いので、私が踊っている音楽や振り付けはかつての世界的レジェ
ンドが踊っていたものを受け継いでいます。そのため踊る際には音楽や振り付けが受け継いできた世界観を理解し、自分なりに解釈することが必要です。自分が踊るキャラクターを自身の人生経験の全てを生かして解釈して、「1人の人間」としてのキャラクターを踊りきります。
それができたとき観客は視線や息遣いによって、踊り手の心が届いたことを伝えてくれます。バレエを通して、国境を越え、何世紀もの時代を超えて、人の心と繋がれることを感じることができるのは最大の喜びです。
「信念徹底」で
附属高等学校から大学、そして社会へ
中学生時代にバレエのプロになるのを諦めたあと、日本女子大学の創立者 成瀬仁蔵先生の「信念徹底」という言葉に共感して日本女子大学附属高等学校に進学しました。そして高校卒業時には幅広い分野に挑戦できる日本女子大学の家政経済学科を選んで進学し、現在はファッション雑誌に出てくる女性らしさの表現の変化について卒業論文を書いています。
今回ジャパングランプリで3位入賞できたけれど、現在すでに私は新しい目標を持っています。「信念徹底」で自分自身の限界に挑戦し続けたいと考えています。