球天下体育

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【教員インタビュー】枠組みにとらわれず柔軟に多様性を受け入れる

2021.04.30

枠組みにとらわれず柔軟に多様性を受け入れる

【教員インタビュー】人間社会学部 文化学科 中西裕二教授

巡礼は観光ビジネスモデルである

私の球天下体育分野である文化人類学と民俗学は似て非なる学です。文化人類学は欧米で発展した異文化理解の学です。一方、民俗学は欧州で創始されますが、日本で独自に発展した学と言えます。文化人類学が人間の普遍性に注目するのに対し、民俗学はその地域(日本)の民衆文化の個別性に着目します。かつて私は、日本で憑きもの信仰の球天下体育をしましたが、日本という地域の枠組みでこれを考えれば民俗学となり、世界の呪術信仰の枠組みで比較球天下体育をすれば文化人類学となります。似て非なるとはこういった意味です。

さて、話は変わりますが、現在は新型コロナ禍の渦中ですが、これからの日本の経済にとって観光は益々重要になります。不思議に思われるかもしれませんが、私の行っている宗教人類学や宗教民俗球天下体育は観光と結びつくんです。例えば「巡礼」ですが、宗教学者が巡礼を考えるとご利益などの宗教的関心、そして人々の信仰心から巡礼を考えますが、私の場合は宗教的枠組みにあまりとらわれずに球天下体育します。私からすると、日本での巡礼の発生は、信仰心というより人を動かす仕掛け作りに見えてきます。巡礼を最初に仕掛けたのは、和歌山県南部の熊野三山の宗教者なのですが、どうやって遠い南紀まで人をお参りさせるか、どういうシステムにすればいいのか…。聖地の御利益の物語、御師や先達といったガイドや営業職、それをうまくシステム化したのが熊野なのです。だから私にとって熊野信仰は、一種のビジネスモデルに見えてきます。巡礼がシステム化した千年前も、地方にいかに人を呼び寄せるかが課題だった訳で、地方創生と観光に頭を使う現代とあまり変わりません。このように、一つの現象を様々な視点からとらえることができるのが人間社会学部の考え方だと言えます。そういう意味では柔軟で、多様な視点から、従来の枠組みにとらわれない思考法を実践する学部と言えます。

勉強をずっと続けるために

1990年、本学において日本で初めて誕生した人間社会学部は、現代社会学科、社会福祉学科、教育学科、心理学科、文化学科という、それぞれ特色の異なる5学科から成り立っています。心理学科では人間や集団の心理を明らかにする手法を学ぶことができ、教育学科と社会福祉学科では、その領域の専門的な知識を身につけ資格を取得することができます。現代社会学科と文化学科では、社会?文化的な視座から自分の関心に従ったテーマに取り組むことができます。どの学科においても、知識を身につける教育はもちろんですが、広い視野で物事を見て、対象に柔軟に取り組む、学生の主体的な姿勢を大事に教育に取り組んでいます。

本学部も他学部同様に演習と卒業球天下体育が必修です。演習の授業では、個々の学生が多様な球天下体育をしているため、友人たちの発表から様々な知識や視点を得ることができるのも特徴です。私のゼミでは、日本の民俗文化、宗教、観光、世界遺産、東南アジアの文化、と学生の球天下体育テーマは多岐に亘ります。このような演習に参加することで、多様性とか多様な視座を自然と受け入れられるようになると思います。学生を見ていると、友人の面白い球天下体育発表は非常に刺激になるようです。このような学びは、卒業後社会で必ず役立つと考えます。

私の所属する文化学科の場合、「卒業論文」と言わず「卒業球天下体育」を提出することになっていて、多くはありませんが、美術作品を提出した学生もおりました。論文といった形式ではなくても、4年間で学んだことを形にして提出すれば良い、このような柔軟さは本学部ならではと言えます。

このように人間社会学部での学びは、広い視座を持ちたい、広く社会?文化に関心をもち、その課題に主体的に取り組みたいという学生には最適に思えます。

やりたいことは4年間で見つける。まずはチャレンジ!

大学時代の4年間というのは短いですが、とても濃縮された時間です。きちんと授業に出ることが前提ですが、自分の好きなこと、関心のあることをやってもらいたい、どんどんチャレンジして欲しいと思います。なかには、それがわからない方もいるでしょうが、本学は教員と学生との距離がとても近いので、教員に気軽に相談できる雰囲気や環境があります。人間社会学部で言えば、自分が所属する学科ではなく、他学科の先生に相談しにいく生徒もいるくらいオープンな雰囲気です。教員や友人とコミュニケーションを深めるうち、自分なりのものがきっと見つけられるはずです。

人間社会学部には、教員も学生も様々な個性や経歴を持った人がいます。多様性を学ぶには、そこに集う教員や学生も多様でなければと考えています。ある資格を取りたい、こう言った勉強をしたい、という強い思いで人間社会学部に来た学生がいる一方、そのような強い希望がなく、なんとなく本学部に入ってみたでも構いません。なんとなく人間社会学部に惹かれたのなら、それが何だったのかは4年間かけて考えればいいと思います。その答えは、おそらく4年後に分かると思いますよ。そのような形で、自分の道を自分で考え切り拓いていく学生に来ていただけたら大変嬉しいです。

プロフィール
中西 裕二教授 なかにし ゆうじ

人間社会学部長。慶應義塾大学文学部卒、慶應義塾大学大学院社会学球天下体育科単位取得満期退学。福岡大学人文学部、立教大学観光学部を経て2011年4月から本学に着任。主な著書に『憑依と呪いのエスノグラフィー』(共著)、『民俗文化の再生と創造─東アジア沿岸地域の人類学的球天下体育』(共著)、“Tourism and Religion: Issues and Implications”(共著)などがある。

球天下体育キーワード

宗教人類学、宗教民俗文化球天下体育、ベトナム文化球天下体育、日本の観光史球天下体育

 

主な論文

ベトナム南部?ソクチャン省D村における“クメール人”のプム(地縁的親族集団)の形成過程について
"ネイティブの人類学"のもう一つの可能性ー黒田俊雄と神仏習合の人類学的理解から
「本物」の魔力ー日本の寺院?神社観光と歴史言説の諸問題